企業対応事例集 - 重要鉱物×CRMA

🏢 重要鉱物×CRMA 企業対応事例

この規制テーマに関する各企業の具体的な対応状況、戦略、直面する課題を整理しています。

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欧州重要原材料法(EU CRMA)

管轄・地域欧州連合 (EU)
主要タイムライン2024年5月発効。2030年までに域内採掘10%、加工40%、リサイクル25%(当初目標15%から引上げ)、単一第三国依存度65%未満の目標設定。
主な規制対象・影響範囲34物質の重要原材料(うち17物質を戦略原材料に指定)。リチウム、コバルト、ゲルマニウム、希土類など
GRI 規制サマリ

EVバッテリーや防衛、デジタル化に必須の重要鉱物を安定確保するための基本法。域内調達比率の引き上げと、サプライチェーン上流での厳格なデューデリジェンスが義務化されます。

📊 規制対応ポジショニング・マトリクス(GRI分析)

企業PositionResponse TypeSC ImpactGRI Insight
Glencore早期戦略転換設備・技術投資Medium (中)サルデーニャ島の施設を Portovesme CRM Hub へ転用。ストラテジックプロジェクト選定。
Umicore早期戦略転換設備・技術投資Medium (中)2025年3月にゲルマニウム関連2プロジェクトがCRMAストラテジックプロジェクトに選定。
Rio Tintoリスク直面製品適応High (高)欧州最大級のリチウムプロジェクトJadarがCare & Maintenanceに移行。
住友金属鉱山機会活用設備・技術投資High (高)HPAL技術による一貫サプライチェーンとトヨタとの全固体電池正極材の共同開発。

Glencore

Glencore plc
CH鉱業・資源・金属(コバルト・銅・ニッケル・亜鉛)
自主的先行

⚡ DRCコバルト輸出規制の直撃とPortovesmeリサイクルハブによる下流垂直統合の開始

CRMA(Regulation (EU) 2024/1252)は2024年5月23日施行、2030年までにEU域内で採掘10%・加工40%・リサイクル25%の達成、および特定非EU国からの年間消費量65%超の調達禁止を目標とする。対象は34の重要原材料(コバルト・リチウム・ニッケル・レアアース・グラファイト等)。Glencoreは採掘(DRC、EU域外)ではなくリサイクル(Portovesme、EU域内)でCRMAの目標達成に貢献するポジションをとる。2025年12月には中国のレアアース輸出規制強化への対応としてRESourceEU行動計画によるCRMA改正提案も出ている。

🎯 主な取り組み・施策

  • CRMAストラテジックプロジェクト選定(2025年3月25日): サルデーニャ島の既存Glencore製錬施設(1929年操業開始の鉛亜鉛・水素冶金複合施設)を転用するPortovesme CRM Hubが、Li-Cycleとの50/50ジョイントベンチャーとして欧州委員会第1次ストラテジックプロジェクト47件(13カ国・14原料)の一つに採択。廃棄電池のブラックマスから水素冶金技術でニッケル・コバルト・リチウムを回収する計画
  • コバルト生産の実態: GlencoreはDRCのKCC(Kamoto Copper Company)とMutanda of 2鉱山を運営。世界シェアは2022年22%から2023年18%へ低下し、CMOCに2023年に逆転された。コバルトは99%が銅またはニッケルの副産物として産出されるため、採掘規模は銅生産量に規定される構造
  • DRCクォータ制への対応(2026年): DRC全体の年間輸出上限96,600トン(うち商業生産者への配分は87,000トン、9,600トンは国家戦略備蓄)のもと、Glencoreの2026年配分(2025年繰越含む)は22,800トン。2026年Q1のコバルト産出量は前年同期比39%減の5,800トンに抑制し、クォータ超過分は在庫としてDRC国内に留置
  • コバルト価格の回復: 2025年2月の安値(9年ぶり安値水準)から、DRCの輸出規制により2026年4月時点で$26/lb(約57,320ドル/トン)まで上昇(約167%の回復)。ただし規制主導の価格上昇であり需要側の実需回復ではない点に留意

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •DRCの資源ナショナリズムのエスカレーション: 2025年の輸出禁止・クォータ制導入に続き、2026年6月にはARECOMSが未消化クォータの強制没収(国家戦略備蓄への移管)を発表した。物流のボトルネック(通関手続き・トラック輸送路の課題)により期限内出荷が困難なケースが報告されており、Glencoreも同様のリスクに晒され続ける。DRCが「資源を輸出するだけの国から加工付加価値を得る国へ」転換する意図を持つ以上、Glencoreの採掘事業は恒常的な政策リスク下に置かれる
  • •コバルト需要構造の変化: EV業界ではコバルト使用量削減(NMC→LFPへのシフト)・テスラのコバルトフリー電池・新材料開発が進行中。2024年の構造的過剰供給(CMOCの急増産が主因)を受け、GlencoreのコバルトビジネスモデルはEV電池化学の長期トレンドに依存したリスクを内包する
  • •Portovesme CRM HubはCRMA戦略の文脈では優位性を持つが、バッテリーリサイクル事業として見た場合、Umicore・Redwoodなど専業リサイクラーとの技術・コスト競争が待っている。水素冶金技術は有望だが、商業規模での採算確保はまだ実証されていない段階であり、Li-Cycle側の経営状況(北米事業の課題)がJV全体の実行力に影響するリスクもある
  • •石炭事業との矛盾: Glencoreは重要鉱物プレイヤーとして脱炭素サプライチェーンに貢献する一方、世界有数の石炭生産・取引企業でもある。CRMAが目指すグリーントランジションの支援と石炭事業の継続という矛盾は、EU当局・投資家・パートナー企業からの批判的評価を受け続けており、ストラテジックプロジェクト認定の信頼性にも影を落とす
情報源:
📢 2025-03-25🕐 最終検証: 2026-07-08🔍 Last source review: 2026-07-08

【GRI編集部コメント】

Glencoreは、EUがもっとも警戒する『特定国への過度な依存』の象徴であるDRCコバルト市場で、中国系企業に対抗する最大の西側プレイヤーです。同社が直面するDRCの資源ナショナリズムは、輸出禁止、クォータ制、そして2026年6月の未消化クォータ没収と段階的にエスカレートしており、地政学リスクが動的に悪化する現実を体現しています。Portovesmeリサイクルハブへの投資はLi-Cycleとの協働による下流戦略であり、採掘依存からの脱却を模索する現実的なリスクヘッジとしてGRIは高く評価します。

DRCのクォータ制度・没収措置は流動的なため、次回検証時に最新のARECOMS発表・Glencoreの四半期production reportを再確認すること。コバルト価格の推移も継続モニタリング対象。

Umicore

Umicore SA/NV
BE金属精錬・バッテリー材料・リサイクル(材料技術)
自主的先行

⚡ ゲルマニウムプロジェクト2件のCRMA認定とバッテリー材料事業のCORE戦略による再構築

CRMA(Regulation (EU) 2024/1252)は2024年5月発効、2030年までにEU域内で採掘10%・加工40%・リサイクル25%の達成を目標とする。2025年3月25日、欧州委員会は第1次ストラテジックプロジェクト47件(Commission Decision (EU) 2025/840)を選定し、Umicoreのゲルマニウム関連2件(GePETO・ReGAIN)もこれに含まれる。Umicoreは2025年3月に発表したCORE戦略のもとで、稼ぐ事業(貴金属精錬・触媒・特殊材料)への資本再配分とバッテリーカソード材料の価値回収フェーズへの移行を進めている。

🎯 主な取り組み・施策

  • CRMAストラテジックプロジェクト2件認定(2025年3月、Umicore Electro-Optic Materials事業部門): GePETO(ゲルマニウム精製加工・ベルギー)とReGAIN(ゲルマニウム代替素材開発・ベルギー)。光ファイバーケーブル・赤外線技術・衛星用太陽電池基板に不可欠なゲルマニウムは中国が2023年夏に輸出規制を発動した戦略原料であり、EU域内でのゲルマニウム関連ストラテジックプロジェクトはこの2件のみ
  • Hoboken精錬所(ベルギー)が欧州最重要のリサイクルハブ。使用済みEVバッテリー・電子機器・触媒コンバーターから金・銀・パラジウム・コバルト・ニッケル・ゲルマニウムなど約20種の非鉄金属を回収する「都市鉱山」として機能し、CRMAが定める2030年リサイクル目標25%達成の中核インフラの一つ
  • IONWAY JV(Umicore×Volkswagen PowerCo): ポーランドNysaの既存カソード材料工場に隣接する第1工場を建設中。プロジェクト総投資額は最大17億ユーロ(ポーランド政府補助3.5億ユーロ控除後は実質13.5億ユーロ)、2030年までに160GWh相当(EV約220万台分)のカソード活物質供給能力を目指す。Umicore自身の2025-2028年CORE戦略における資本配分ではIONWAYへ5億ユーロ、ポーランド・韓国のカソード材料プロジェクトへ3.7億ユーロを継続投資として計画
  • 2025年通期決算: グループ全体の売上は36億ユーロ(+3%)、Adjusted EBITDAは8.47億ユーロ(+11%)、Adjusted EBITは5.79億ユーロ(+21%)と好調。Catalysis(触媒)・Specialty Materials・Recycling事業の収益力がバッテリー部門の赤字を吸収する構造

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •バッテリー材料事業のうちリサイクル部門(Battery Recycling Solutions)の量産化延期は、使用済みEVバッテリーの本格的な回収量増加が2030年代以降という構造的な時間差に起因する。CRMAが求める「2030年にリサイクル由来25%」という目標達成タイミングと、Umicoreのリサイクル量産投資再開のタイミングには依然ギャップが残る
  • •ゲルマニウムCRMAプロジェクト(GePETO・ReGAIN)は中国の輸出規制による供給不安を背景に選定されたが、中国がゲルマニウム輸出規制を緩和した場合、欧州域内での精製コスト優位性が失われるリスクがある。CRMAのストラテジックプロジェクト認定は迅速な許認可・資金アクセスを支援するものであり、投資回収そのものを保証するものではない
  • •IONWAY JV is VW PowerCoとの戦略的提携として有望だが、VW本体の経営状況(欧州EV販売の変動・収益性圧力)がIONWAYの160GWh目標達成に必要な需要見通しに影響するリスクがある。総投資額17億ユーロという規模はUmicore単独で吸収できる水準ではなく、PowerCo側の需要確約(オフテイク契約)の履行状況に強く依存する
  • •Loyalist(カナダ)工場建設の一時停止は「pause」であり正式な撤退ではないが、Umicore自身が北米向け供給を韓国・清安工場からの供給で代替する方針を示しており、再開の具体的な時期・条件は明示されていない。北米市場向け生産能力の空白が長期化するリスクがある
情報源:
📢 2025-03-25🕐 最終検証: 2026-07-08🔍 Last source review: 2026-07-08

【GRI編集部コメント】

Umicoreのケースは、CRMAが描く循環経済の理想を体現する一方で、バッテリー材料事業の収益化のタイミング(リサイクル量産化の延期など)との時間差に苦しむという『移行期のジレンマ』を最も明快に示しています。カソード材料自体は損益分岐点まで改善している点、およびリサイクル量産化の延期がEV回収量の本格増加を待つための CapEx 規律に則ったものである点は、単なる経営危機ではなく『現実的な CORE 戦略』としての強かさを示しています。

Battery Materials Solutions事業の損益は四半期ごとに変動が大きいため、次回検証時に最新の決算(2026年通期など)を再確認すること。Loyalist工場の再開判断や中国のゲルマニウム輸出規制の動向も継続モニタリング対象。

Rio Tinto

Rio Tinto
GB鉱業・資源開発(銅・リチウム・アルミニウム・鉄鉱石)
自主的先行

⚡ Arcadium Lithium買収による事業規模拡大とCRMA認定のJadarプロジェクト一時停止

CRMA(Regulation (EU) 2024/1252)は2030年までにEU域内で採掘10%・加工40%・リサイクル25%の達成、および単一国依存65%上限を目標とする。Jadarは2025年6月4日、欧州委員会により第三国(non-EU)ストラテジックプロジェクトとして正式選定されていたが、セルビア国内の許認可未進捗と地域住民の反対が続き、2025年にCare & Maintenanceへ移行した。一方でRio Tintoは2025年3月にArcadium Lithiumを67億ドルで買収し、アルゼンチン・カナダ・オーストラリアの資産をRio Tinto Lithiumとして統合、2028年までに約200ktpaのリチウム炭酸塩生産能力を目指している。

🎯 主な取り組み・施策

  • Arcadium Lithium買収完了(2025年3月6日・67億ドル): アルゼンチン(Fenix・Olaroz操業中、Sal de Vida・Cauchari開発中)・カナダ(Whabouchi・Galaxy)・オーストラリア(Mt Cattlin)の7リチウム資産とRincon(アルゼンチン)を取得しRio Tinto Lithiumを新設。2028年までに約200ktpa(リチウム炭酸塩換算)の生産能力を目指す
  • Oyu Tolgoi(モンゴル)銅鉱山の本格稼働: 2025年通期の銅生産量が前年比+61%増。地下採掘のランプアップと地表までの搬送コンベアの本格稼働により、2028〜2036年平均で約500kt/年の銅生産(世界第4位規模)を見込む。Rio Tinto66%・モンゴル政府34%の合弁
  • 事業再編(2025年10月): CEO交代(Jakob Stausholm→Simon Trott、2025年8月25日就任)後、鉄鉱石・アルミニウム&リチウム・銅の3部門体制へ再編。Borates(ホウ酸塩)とIron & Titaniumは戦略的レビュー(売却検討含む)の対象として切り離された
  • Jadar(セルビア)リチウムプロジェクトのCare & Maintenance移行: 欧州委員会が2025年6月4日にCRMA第三国ストラテジックプロジェクトとして選定していたにもかかわらず、セルビア政府の許認可未進捗・地域住民反対が続き、2025年にCare & Maintenanceへ移行したことが2025年11月に公式確認された。Mineral Resources合計約136百万トン(2017年時点、2022年更新時点では143.5百万トン)の埋蔵量を持つ欧州最大級のリチウム鉱床

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •Jadar Care & Maintenanceの中長期的影響: 欧州最大級のリチウム埋蔵量(約136百万トン)が当面開発されないことは、CRMAが期待していた欧州近隣供給源の一つを事実上失うことを意味する。Care & Maintenanceから本格再開へのトリガー条件(セルビア国内の政治的安定・リチウム価格回復)は未確定であり、CRMAの第三国ストラテジックプロジェクト認定が実際の開発を保証しないことの反証となっている
  • •南米リチウムの地政学的複雑性: Arcadium買収で得たアルゼンチン資産(Fenix・Olaroz・Sal de Vida・Cauchari)はアタカマ塩湖由来のbrine型リチウムで低コストだが、アルゼンチンの資源ナショナリズム・外貨規制・税制変更リスクは継続的な経営課題。チリ・ボリビアと並ぶ「リチウムトライアングル」地域であり、各国政府の政策変更が同時に生産計画に影響しうる
  • •Oyu Tolgoi銅の「友好国」問題: モンゴル産銅はCRMAの「単一国65%上限」規制の文脈では中立的立場にあるが、地理的に中国精錬所向け輸出フローが主力である実態は変わらない。「採掘量の増加」が自動的に「EUへの供給貢献」を意味するわけではなく、精錬先の多様化が別途必要
  • •リチウム市場の構造的過剰供給: Arcadium買収時(2024年)のリチウム価格はピーク比大幅下落した低水準にあり、Mt Cattlinの稼働停止が示すとおり南米・豪州の複数資産で生産調整が続いている。200ktpa達成目標と市場価格回復のタイミングが一致しないリスクは、Jadar以外の資産にも及ぶ構造的な課題である
情報源:
📢 2025-03-06🕐 最終検証: 2026-07-08🔍 Last source review: 2026-07-08

【GRI編集部コメント】

Rio TintoのJadarプロジェクトの事例は、CRMAが内包する最大の脆弱性を露呈しています。欧州委員会が『ストラテジックプロジェクト』に指定し、資金調達や許認可の迅速化という強力なバックアップを提供したにもかかわらず、地元の環境反対運動やセルビアの国内政治事情によって頓挫しました。これは『制度上のインセンティブがあっても、ローカルなESGリスクや民意の対立は解決できない』という資源開発特有の限界を示しています。Arcadium買収によるアルゼンチン等へのリチウム戦略のシフトは、グローバルメジャーとしての多角化によるリスクヘッジですが、Mt Cattlinの停止に見られるように、市場価格の低迷という別の共通リスクとも直面しており、CRMAの目標達成の難易度を裏付けています。

Jadarの再開判断、Mt Cattlin・Oyu Tolgoiの生産動向、リチウム市場価格の推移は変動が大きいため、次回検証時に最新情報を再確認すること。

住友金属鉱山

Sumitomo Metal Mining Co., Ltd.
JP非鉄金属・資源開発・電池材料(材料技術)
業界リード

⚡ HPAL技術による一貫サプライチェーンの構築とトヨタとの全固体電池正極材共同開発の締結

CRMAはEU域内の採掘・加工・リサイクル能力構築を目指す規制であり、フィリピン・日本を拠点とする住友金属鉱山は直接的な規制対象(EUストラテジックプロジェクト認定など)ではない。ただしEU Battery Regulationのサステナビリティ要件(カーボンフットプリント申告・デューデリジェンス)は同社の電池材料サプライチェーンに波及するため、「CRMAが求める供給多様化・友好国からの安定供給に貢献する非EU企業」という位置づけが正確。HPAL技術による低品位鉱石の有効活用は、世界的なニッケル資源の枯渇圧力を緩和する技術として、CRMA・EU電池規則双方の政策目標と方向性が一致する。

🎯 主な取り組み・施策

  • HPAL技術(世界初商業化): 2005年にフィリピン・パラワン島のコーラルベイニッケルで、従来は製錬対象外だった低品位ニッケル酸化鉱石からニッケルとコバルトを同時回収するHPAL技術を世界で初めて商業化(当初年産1万トン、2009年に2.4万トンへ増強)。2013年にタガニート(ミンダナオ島)で第2拠点が稼働開始(当初年産3万トン、2017年度に3.6万トンへ増強)
  • 自己完結型サプライチェーン: フィリピン2拠点のHPALプラントで生産したニッケル・コバルト混合硫化物(MS)を愛媛県新居浜市(電気ニッケル)・播磨事業所(硫酸ニッケル)に輸送し正極材まで一貫加工。鉱石確保→HPAL精錬→硫酸ニッケル製造→正極材製造というバリューチェーンを単一企業グループ内で完結
  • トヨタとの全固体電池正極材共同開発(2025年10月8日契約締結): 2021年頃からの共同研究を経て、住友金属鉱山の粉体合成技術による耐久性に優れた正極材を開発。トヨタが目指す2027〜2028年のBEV向け全固体電池世界初実用化に向けた材料パートナー。2025年12月に愛媛県新居浜市の電池研究所第2開発棟が竣工。量産は2028年以降・初期は年間数百トン程度の規模を想定。なお固体電解質についてはトヨタは出光興産と別途協業している
  • テスラ向け正極材供給実績: NCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム系)正極材を20年以上にわたり車載電池メーカーに供給してきた実績を持ち、液系電池から全固体電池への技術転換においても正極材サプライヤーとしての地位を維持

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •ニッケル市場の供給過剰とその業績への影響: 2025年3月期は電池材料事業(正極材の品種切り替えに伴う生産能力低下見込み)で572億円の減損損失を計上し、連結純利益は前期比72%減の164億円となった。インドネシアの中国系資本によるNPI(ニッケル銑鉄)増産が主因であり、HPAL由来の高純度ニッケルとは異なる市場セグメントとはいえ、ニッケル相場全体の低迷が在庫評価損等を通じて業績に波及する構造は残る
  • •インドネシアのHPAL競合台頭: 中国資本がインドネシアでHPAL技術を用いた高純度ニッケル生産を急速に拡大しており、住友金属鉱山が20年かけて確立した「低品位鉱からの高純度ニッケル」という競争優位に直接挑戦している。電池材料向けニッケルでの中国系企業との価格競争が今後の最大リスク
  • •全固体電池の量産スケジュールと規模のリスク: トヨタとの共同開発は戦略的に重要だが、2028年以降の量産開始時点でも初期生産規模は年間数百トン程度にとどまる見通しで、当面は既存の液系電池向け正極材事業の収益規模には遠く及ばない。固体電解質との界面抵抗・粒子形状制御などの技術課題が残り、量産スケジュールが後ろ倒しになるリスクもある
  • •CRMAの「EU域内調達優先」と非EU企業の立場: CRMAのストラテジックプロジェクト認定はEU域外企業には適用されないため、フィリピン・日本を拠点とする住友金属鉱山は「域内サプライチェーン強化」の直接的な恩恵を受けられない。EU Battery Regulationのデューデリジェンス・カーボンフットプリント要件への対応は必要だが、CRMAの資金・許認可支援は対象外という立場にある
情報源:
📢 2025-10-08🕐 最終検証: 2026-07-08🔍 Last source review: 2026-07-08

【GRI編集部コメント】

住友金属鉱山は、CRMAシリーズにおける『日本独自の垂直統合モデル』の典型です。フィリピンでのHPAL製錬から日本の正極材加工までを自社完結する強固なサプライチェーンは、炭素フットプリントやトレーサビリティ要件の管理において圧倒的な強みを持ちます。トヨタとの全固体電池正極材の提携は次世代の覇権を狙う布石ですが、インドネシアの中国系HPALの競合やニッケル市況の低迷といった構造的リスクも抱えています。欧州外プレイヤーとして、EU規制をクリアしながら独自の技術優位性を活かす同社の戦略は、他の非EU企業にとって最良のモデルケースとなります。

ニッケル需給予測は住友金属鉱山自身が年複数回改定するため、次回検証時に最新の予測値を再確認すること。全固体電池の量産スケジュール(2027〜2028年目標)の進捗も継続モニタリング対象。