Glencore
Glencore plc⚡ DRCコバルト輸出規制の直撃とPortovesmeリサイクルハブによる下流垂直統合の開始
CRMA(Regulation (EU) 2024/1252)は2024年5月23日施行、2030年までにEU域内で採掘10%・加工40%・リサイクル25%の達成、および特定非EU国からの年間消費量65%超の調達禁止を目標とする。対象は34の重要原材料(コバルト・リチウム・ニッケル・レアアース・グラファイト等)。Glencoreは採掘(DRC、EU域外)ではなくリサイクル(Portovesme、EU域内)でCRMAの目標達成に貢献するポジションをとる。2025年12月には中国のレアアース輸出規制強化への対応としてRESourceEU行動計画によるCRMA改正提案も出ている。
🎯 主な取り組み・施策
- CRMAストラテジックプロジェクト選定(2025年3月25日): サルデーニャ島の既存Glencore製錬施設(1929年操業開始の鉛亜鉛・水素冶金複合施設)を転用するPortovesme CRM Hubが、Li-Cycleとの50/50ジョイントベンチャーとして欧州委員会第1次ストラテジックプロジェクト47件(13カ国・14原料)の一つに採択。廃棄電池のブラックマスから水素冶金技術でニッケル・コバルト・リチウムを回収する計画
- コバルト生産の実態: GlencoreはDRCのKCC(Kamoto Copper Company)とMutanda of 2鉱山を運営。世界シェアは2022年22%から2023年18%へ低下し、CMOCに2023年に逆転された。コバルトは99%が銅またはニッケルの副産物として産出されるため、採掘規模は銅生産量に規定される構造
- DRCクォータ制への対応(2026年): DRC全体の年間輸出上限96,600トン(うち商業生産者への配分は87,000トン、9,600トンは国家戦略備蓄)のもと、Glencoreの2026年配分(2025年繰越含む)は22,800トン。2026年Q1のコバルト産出量は前年同期比39%減の5,800トンに抑制し、クォータ超過分は在庫としてDRC国内に留置
- コバルト価格の回復: 2025年2月の安値(9年ぶり安値水準)から、DRCの輸出規制により2026年4月時点で$26/lb(約57,320ドル/トン)まで上昇(約167%の回復)。ただし規制主導の価格上昇であり需要側の実需回復ではない点に留意
⚠️ 継続する課題・リスク
- •DRCの資源ナショナリズムのエスカレーション: 2025年の輸出禁止・クォータ制導入に続き、2026年6月にはARECOMSが未消化クォータの強制没収(国家戦略備蓄への移管)を発表した。物流のボトルネック(通関手続き・トラック輸送路の課題)により期限内出荷が困難なケースが報告されており、Glencoreも同様のリスクに晒され続ける。DRCが「資源を輸出するだけの国から加工付加価値を得る国へ」転換する意図を持つ以上、Glencoreの採掘事業は恒常的な政策リスク下に置かれる
- •コバルト需要構造の変化: EV業界ではコバルト使用量削減(NMC→LFPへのシフト)・テスラのコバルトフリー電池・新材料開発が進行中。2024年の構造的過剰供給(CMOCの急増産が主因)を受け、GlencoreのコバルトビジネスモデルはEV電池化学の長期トレンドに依存したリスクを内包する
- •Portovesme CRM HubはCRMA戦略の文脈では優位性を持つが、バッテリーリサイクル事業として見た場合、Umicore・Redwoodなど専業リサイクラーとの技術・コスト競争が待っている。水素冶金技術は有望だが、商業規模での採算確保はまだ実証されていない段階であり、Li-Cycle側の経営状況(北米事業の課題)がJV全体の実行力に影響するリスクもある
- •石炭事業との矛盾: Glencoreは重要鉱物プレイヤーとして脱炭素サプライチェーンに貢献する一方、世界有数の石炭生産・取引企業でもある。CRMAが目指すグリーントランジションの支援と石炭事業の継続という矛盾は、EU当局・投資家・パートナー企業からの批判的評価を受け続けており、ストラテジックプロジェクト認定の信頼性にも影を落とす
【GRI編集部コメント】
Glencoreは、EUがもっとも警戒する『特定国への過度な依存』の象徴であるDRCコバルト市場で、中国系企業に対抗する最大の西側プレイヤーです。同社が直面するDRCの資源ナショナリズムは、輸出禁止、クォータ制、そして2026年6月の未消化クォータ没収と段階的にエスカレートしており、地政学リスクが動的に悪化する現実を体現しています。Portovesmeリサイクルハブへの投資はLi-Cycleとの協働による下流戦略であり、採掘依存からの脱却を模索する現実的なリスクヘッジとしてGRIは高く評価します。
DRCのクォータ制度・没収措置は流動的なため、次回検証時に最新のARECOMS発表・Glencoreの四半期production reportを再確認すること。コバルト価格の推移も継続モニタリング対象。
