Glencore
Glencore plc⚡ DRCで銅・コバルトを生産する唯一の主要な西側企業を自任——コバルト輸出クォータ制度の下で最初に輸出し、2025年8月にLi-Cycleを買収して電池リサイクルを自社事業化
GlencoreはDRC(コンゴ民主共和国)のMutanda Mining(Mumi)とKamoto Copper Company(KCC)で、銅・コバルトの採掘から精製・トレーディングまでを担う。同社は自らを「DRCで銅・コバルトを生産する唯一の主要な西側企業」と位置づけており、2025年の両鉱山の生産量は銅24.78万トン・コバルト3.35万トンだった。EU電池規則のサプライチェーン・デューデリジェンス(DD)義務(2027年8月18日適用)の最上流に位置する企業である。DRCは2025年2月にコバルト輸出を停止し、同年10月に輸出クォータ制度へ切り替えた(2025年残り期間の上限18,125トン、2026・2027年は年96,600トン)。Glencoreはこの制度の下で最初にコバルトを輸出した企業となった。リサイクルでは、2025年8月に経営破綻したLi-Cycleの資産を買収し、「Glencore Battery Recycling」として自社で運営している。2026年2月には、米国政府系の開発金融機関も参加するOrion Critical Mineral Consortium(Orion CMC)と、Mumi・KCCに対するGlencoreの権益の40%を売却する非拘束の覚書を締結した(両鉱山の企業価値は約90億ドル、経営はGlencoreグループが継続)。DRCでの人権・汚職をめぐる過去の指摘と、EU規制が求める透明性との整合が、引き続き最大の課題である。
🎯 主な取り組み・施策
- 2025年4月:Mumi・KCCの両鉱山がThe Copper Mark(責任ある銅生産の認証)を取得——改定基準RRA 3.0で認証されたアフリカ初の鉱山
- 2025年10月:DRCがコバルト輸出停止(同年2月〜)を輸出クォータ制度に切り替え。Glencoreは同制度の下で最初にコバルトを輸出した企業となった(2025年12月報道)
- 2025年8月:経営破綻したLi-Cycleの資産を買収完了(米国・カナダ・ドイツの前処理拠点、米ロチェスターの建設中の拠点、知的財産)。事業は「Glencore Battery Recycling」として継続
- 2024年12月:イタリア・サルデーニャ島Portovesmeの既存冶金施設を活用する欧州リサイクル拠点について、Glencore主導・資金負担でプレフィージビリティ・スタディを再開
- 2026年2月:Orion CMCと、Mumi・KCCに対するGlencoreの権益の40%を売却する非拘束の覚書を締結(両鉱山の企業価値約90億ドル、経営はGlencoreグループが継続)
⚠️ 継続する課題・リスク
- •DRCでの人権・汚職をめぐる過去の指摘:2022年に汚職の申し立てをめぐってDRC政府と約1.8億ドルで和解した。2024年にはBusiness and Human Rights Resource Centreが、GlencoreのDRCの銅・コバルト鉱山と汚染・児童労働・脱税との関わりを指摘する報告を紹介している(Glencoreは反論)。EU電池規則のDD義務の下では、こうした指摘への対応状況が顧客の審査対象になる。
- •輸出クォータ制度の運用リスク:2026・2027年の輸出上限は年96,600トンで、うち9,600トンは規制当局ARECOMSの裁量枠。期限までに使わなかった枠の没収や、手続きの停滞による出荷遅延も起きており、供給量の見通しを立てにくい。
- •Portovesme拠点の実現時期:Li-Cycleとの共同計画として始まった構想は、Li-Cycleの買収によりGlencore単独の計画となった。EU電池規則の再生材含有義務(2031年8月〜)に向けて、欧州域内の再生材の供給源として実現時期が注目される。
- •Orion CMCとの取引の影響:成立すれば、Orion CMCは持分に応じた生産物の販売先を指定できる(米国とDRCの戦略的パートナーシップ協定に沿った枠組み)。EU向け供給の配分や、下流の電池メーカーへのトレーサビリティ情報の提供にどう影響するかは、最終合意の内容次第である。
【GRI編集部コメント】
GlencoreのEU電池規則への対応は、「最も難しい位置にいる最上流企業」の現実を示しています。人権・汚職リスクの高いDRCで採掘しながら、EU規制が求めるトレーサビリティと透明性に応えなければならない——これはGlencore固有の問題ではなく、コバルトのサプライチェーン全体の構造的な課題です。2025〜2026年に、この上流の構図は大きく動きました。第一に、DRC政府が輸出クォータで供給量そのものを管理するようになり、コバルトは「市場で調達するもの」から「政府の割当を通じて出てくるもの」に変わりつつあります。第二に、GlencoreはLi-Cycleを買収し、採掘とリサイクルを一社で担う体制を整えました。第三に、米国系コンソーシアムへの権益40%売却の覚書は、DRC産の銅・コバルトが米国の供給網政策にも組み込まれつつあることを示しています。電池メーカーや自動車メーカーの調達担当者にとって、Glencoreは「DD情報をどこまで開示できるか」と「供給がどの市場に向かうか」の両面で、今後のコバルト調達を左右する重要な変数です。
DRCの輸出クォータ制度、Orion CMCとの取引、Portovesme拠点の計画は変わる可能性があります。最新情報はGlencore公式サイトおよびDRC当局(ARECOMS)の発表をご確認ください。
