企業対応事例集 - 森林破壊×EUDR

🏢 森林破壊×EUDR 企業対応事例

この規制テーマに関する各企業の具体的な対応状況、戦略、直面する課題を整理しています。

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森林破壊防止規則(EUDR)

管轄・地域欧州連合 (EU)
主要タイムライン2023年6月発効。当初予定から延期され、大中企業向けの本格適用は2026年12月30日、零細・小規模企業向けは2027年6月30日開始(延期の正式決定は2025年12月)。
主な規制対象・影響範囲牛肉、カカオ、コーヒー、パーム油、ゴム、大豆、木材およびその派生製品
GRI 規制サマリ

対象商品の生産地が2020年12月31日以降に森林破壊や森林劣化を招いていないことを証明するGPS座標マッピング義務。小規模農家を含むサプライチェーンの追跡が極めて困難な点が課題です。

📊 規制対応ポジショニング・マトリクス(GRI分析)

企業PositionResponse TypeSC ImpactGRI Insight
Ferrero早期戦略転換設備・技術投資High (高)衛星監視とデジタル追跡への早期投資によりトレーサビリティ97%達成。
Mars早期戦略転換設備・技術投資High (高)5品目に衛星監視展開。パーム油の森林破壊ゼロ達成、カカオ長期計画に10億ドル超投資。
Michelin早期戦略転換設備・技術投資High (高)天然ゴムの小規模農家由来100%追跡、GPSNRアシュアランス主導。
IKEA様子見・注視製品適応Medium (中)FSC認証依存の限界に直面。膨大な部品のデューデリジェンス管理負荷が課題。

Ferrero

Ferrero Group
イタリア/ルクセンブルク食品・飲料(消費財)
業界リード

⚡ カカオ原料の追跡率向上と生産地マッピングによる調達管理推進

Ferreroは「Nutella」「Kinder」等のブランドを持つイタリア/ルクセンブルクの大手消費財メーカーで、EUDRの主要対象原料であるカカオ・パーム油・コーヒーへの依存度が高い。「Sacco conosciuto(知っている袋)」という哲学——各原料の産地・栽培方法・生産者を深く理解するという姿勢——をEUDRの法制化以前から事業に組み込んでいた。2025年11月10日の公式記事「Progress Can't Wait: EUDR Now」では、Airbus社の衛星監視システム「Starling」でEUDR関連のパーム油・カカオ・コーヒーのサプライチェーンの100%を監視していると説明した。EUDRの延期については推進派の立場を明確にし、2025年10月にはNestlé、Mars Wrigleyなどとともに、さらなる延期を避けるよう求める書簡に参加した。EUDRの適用日は、Regulation (EU) 2025/2650(2025年12月23日官報掲載)による再延期で、大企業・中規模事業者が2026年12月30日、小規模・零細事業者が2027年6月30日(EU木材規則の対象だった零細・小規模事業者は2026年12月30日)となった。

🎯 主な取り組み・施策

  • Airbus Starling衛星監視システムをEUDR関連全サプライチェーン(パーム油・カカオ・コーヒー農園)に適用——公式記事によれば、EUDR関連のサプライチェーンの100%を監視している
  • Sourcemapなどのプラットフォームでサプライチェーンを詳細に地図化・監視し、社会・農業慣行のデータを継続的な改善に活用(2025年11月の公式記事)。FoodNavigator(2023年11月)は、同社が最新のサステナビリティレポートでカカオの農場出荷時点までのトレーサビリティ96%超を報告したと伝えている
  • Commodity Charters(原料別サステナブル憲章):主要原料ごとにサプライヤーが満たすべき要件を定め、進捗を年次で追跡
  • パーム油は100%がRSPO認証(Segregated)(FoodNavigator、2023年11月の記事が引く同社サステナビリティレポート)。カカオ・コーヒーの認証経由の調達比率は、本カードの出典では確認できないため掲載しない
  • 延期回避を求める書簡(2025年10月):Nestlé、Mars Wrigleyなどとともに、EUDRのさらなる延期を避けるよう欧州の議員と欧州委員会に求める書簡に参加(ESG Today)。Ferrero自身も2025年11月に公式記事「Progress Can't Wait: EUDR Now」で適時の実施への支持を表明

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •ラストマイルの追跡コスト:農場ポリゴンマップやGPS技術へのアクセスが限定的な小規模農家のラストマイル追跡は、大規模な現地フィールドエージェント投入・データ統合プロセスを必要とし、高いコストが継続的に発生する。
  • •EUDR延期による先行投資コストの非対称性の長期化:二度目の延期(2026年12月30日義務化)により、Ferreroが先行して構築したトレーサビリティ体制のコストを競合未対応企業が回収しない期間がさらに延長された。この非対称性がEUDRの推進意欲・ROIに影響するリスクがある。
  • •国別リスク分類の不確実性:2025年5月の実施規則(EU)2025/1093による分類に対し、2025年7月9日に欧州議会が、この規則が委任された実施権限を超えているなどとして、廃止と見直しを求める非立法の決議を採択した。コートジボワール・マレーシア・インドネシアは同規則の低リスク国の一覧になく(標準リスク)、ガーナは低リスク国である。今後の分類の見直しによって、Ferreroが必要とするDDS対応の具体的な負担量が変動しうる。
  • •EUDR情報システムとの統合:DDSは欧州委員会の情報システムを通じて電子提出する必要があるが、多数のポリゴンデータを同システムの形式で準備・提出する技術的な統合負荷が継続的な実務課題となっている

【GRI編集部コメント】

FerreroのEUDRカードは「規制を先取りした企業が、規制の延期によってコスト競争上の不利を被るという皮肉」を示す事例です。FerreroはAirbus Starling衛星監視システムなどに投資してEUDRへの先行対応を進めてきましたが、EUDRが二度延期された結果、この投資コストを回収する期間がさらに伸びています。「Progress Can't Wait」という公式記事のタイトルが示す通り、Ferreroは延期に反対し、適時の実施を求める立場に立っています。GRIを読む日本企業にとっての最重要示唆は、EUDRが定める「2020年12月31日以降の森林破壊ゼロ」という遡及的なカットオフ日という設計です。2026年12月30日の義務化に向けて、今から過去の調達先の森林破壊状況を遡って証明する体制を構築しなければならないことを意味します。調達先のポリゴンマップデータが存在しない場合、EUDR対象の7品目(カカオ・パーム油等)を含む製品のEU市場アクセスが失われるリスクがあります。Ferreroのように「規制前から哲学として実践していた企業」こそが義務化時に市場競争力を維持できるという構造は、日本の食品・飲料メーカーにとっても重要な経営的示唆を持っています。

EUDRの国別リスク分類・義務化スケジュール・DDSシステムの仕様は変化します。最新情報は欧州委員会公式サイトおよびFerrero公式サステナビリティサイトをご確認ください。

Mars

Mars, Incorporated
米国食品・飲料・ペットケア(消費財)
業界リード

⚡ パーム油の森林破壊ゼロ調達への取り組みとコモディティ追跡システムの再構築

Marsは「Snickers」「M&M's」等の菓子事業とペットケア事業(Pedigree等)を抱える非公開の多国籍消費財企業として、EUDRの主要対象原料(カカオ・パーム油・大豆・牛肉・木材由来の紙・パルプ)のすべてに依存する、複雑な対応構造を持つ企業のひとつだ。カカオについては年間350,000〜400,000トンをコートジボワール・ガーナ・ブラジル・インドネシアなど14カ国から調達しており、2018年に開始した「Cocoa for Generations(C4G)」戦略のもとで「2025年までに100%」の目標を掲げた。2025年報告書では、2025年のカカオの98%が森林破壊・転換ゼロ(DCF)の調達だったと報告している。パーム油についてはPalm Positive Planのもとで2020年に森林破壊ゼロのサプライチェーンを実現したと発表したが、2025年報告書ではパーム油とパルプ・紙の達成率は開示予定とされている。「地図・管理・監視(Map-Manage-Monitor)」という3段階のサプライチェーン監視モデルを5品目すべてに適用しており、衛星データ・農家登録・フィールド検証を組み合わせた独自の体制を構築。EUDRの二度目の延期(規則(EU)2025/2650、2025年12月23日官報掲載。大企業・中規模事業者への適用開始は2026年12月30日)については、Nestlé・Ferrero等と連名の推進書簡(2025年10月)でさらなる延期への反対を表明している。

🎯 主な取り組み・施策

  • Cocoa for Generations(C4G)戦略(2018年開始):2025年までに100%という目標を掲げた。2025年報告書では、2025年のカカオの98%がDCF(森林破壊・転換ゼロ)の調達だったと報告している
  • Palm Positive Plan:2020年10月に、同プランが森林破壊ゼロのパーム油サプライチェーンを実現したと発表。2025年報告書では、パーム油は進捗が示され、達成率は開示予定とされている
  • 「Map-Manage-Monitor(地図・管理・監視)」の考え方を、牛肉・カカオ・パーム油・パルプ・紙・大豆の5原料の森林破壊対策に適用——パーム油では衛星マッピングと第三者による検証を併用
  • Nestlé、Ferreroなどとともに、EUDRのさらなる延期を避けるよう求める書簡に参加(2025年10月、ESG Today)
  • Responsibly Sourced Cocoa Programを2019年に導入:サプライヤーに、カカオ農場の境界をGPS座標でポリゴンマッピングし、第一購入地点まで追跡できることを求める(Mars公式のCocoa and Forests Action Plan)

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •C4G 2025年目標の未達と2026年以降の対応:2025年のカカオのDCF比率は98%で、目標の「100%」との差が残る。残る部分への対応が、EUDRの義務化(2026年12月30日)に向けた課題として残る可能性がある。
  • •牛肉・大豆の南米サプライチェーンGPSポリゴン追跡:ペットフード向け牛肉(ブラジル・アルゼンチン)・大豆の農地レベル追跡は業界全体で標準化が遅れており、業界横断的なソリューションへの依存度が高い。
  • •情報システムへの統合と大量DDS提出:年間数十万トン規模の原料を管理するMarsにとって、情報システムへの技術統合とDDS電子提出体制の構築は、2026年末の義務化前の最優先実務課題。欧州委員会の情報システムは2026年6月末に再開されており、その仕様に合わせたMarsの準備タイムラインの整合が必要。
  • •非公開企業としての情報開示と規制当局・NGOとの信頼確保:非公開企業であるMarsは上場企業と異なりサステナビリティ情報開示の義務範囲が限定的だが、EUDRのDDS提出とその公開性(EU情報システム上での公開)により調達先の透明性が高まる。NGO・研究機関からの独立検証要求への対応が信頼性確保の鍵となる。

【GRI編集部コメント】

MarsのEUDRカードは「菓子×ペットケアのマルチビジネスが5品目のEUDR対象原料を同時管理する」という複雑な対応構造を持つ事例として、業界横断的な参照価値があります。C4Gの2025年目標(カカオ100%)の結果(2025年報告書では98%)が、EUDRへの先行対応の進捗を測る材料になります。GRIを読む日本の食品・ペットフードメーカーにとっての示唆は二点あります。第一に、EUDRは菓子の原料だけでなくペットフードの牛肉・大豆にも適用されるという点——Marsが直面する「マルチビジネス・マルチ原料」の複雑性は、ペットフード事業を持つ日本企業にも共通する課題です。第二に、「農園レベルのGPSポリゴンデータ」という要件の技術的難度——Marsが2018年から準備を開始しても、2025年のカカオの森林破壊・転換ゼロ調達が98%にとどまったという事実は、今から準備を始める企業が2026年12月30日の義務化に間に合わせることの困難さを示しています。EUDRに向けた準備は今すぐ開始することが不可欠です。

C4G 2025年目標の結果は、Mars 2025年報告書(2026年6月公開)およびCocoa for Generations 2025年報告(2026年9月公開)で確認できます。EUDRの義務化スケジュール・国別リスク分類は変化します。最新情報は欧州委員会公式サイトおよびMars公式サステナビリティサイトをご確認ください。

Michelin

Compagnie Générale des Établissements Michelin
フランスタイヤ・ゴム製品(工業製品)
業界リード

⚡ タイヤメーカーとして初めてゼロ・デフォレステーションを宣言(2015年、同社による)・GPSNR創設メンバー・SPOTT評価80.3%(2025年3月)——「管轄レベル100%」から「農場プロットGPS」への最難関ラストマイルが残る

Michelinはタイヤ用天然ゴムの購買企業として、EUDRが工業製品サプライチェーンに拡張した最前線に位置する。Michelinは、同社の説明によれば2015年にタイヤメーカーとして初めてゼロ・デフォレステーションのコミットメントを採択し、GPSNR(持続可能な天然ゴムのためのグローバルプラットフォーム)の創設メンバーでもある。2025年9月にはGPSNRアシュアランスシステムへの正式コミットを発表し、独立第三者検証プロセスへの移行を進めており、SPOTT(ZSL/WWF評価)の天然ゴム評価でスコア80.3%(2025年3月)を得ている。2024年11月時点で小規模農家由来調達の100%が管轄レベル(省以上)でトレーサブルと報告しているが、EUDRが義務付ける「農地プロット単位のGPS座標データ」とはトレーサビリティの粒度に大きな差があり、このラストマイルへの引き上げが大きな技術的・コスト的課題として残っている。世界の天然ゴム生産の約85%を担う約600万人の小規模農家の多くが土地権利書を持たず、GPS機材・知識・コスト負担能力を欠くという構造的問題は、Michelin単独では解決できない業界横断課題だ。Porscheとの共同プロジェクト「CASCADE」(インドネシア・小規模農家6,500人支援)や、GPSNRの共有投資メカニズム(SIM。小規模農家の支援などを行う業界基金)への拠出による農家支援が、中長期的な解決策として位置づけられている。EUDRの義務適用は大企業向け 2026年12月30日(Regulation (EU) 2025/2650による再延期後)。

🎯 主な取り組み・施策

  • 2015年:同社の説明によれば、タイヤメーカーとして初めてゼロ・デフォレステーションのコミットメントを採択——以降「非森林破壊由来の天然ゴムのみを調達する」方針を継続し、EUDRを「10年来のコミットメントの可視化・証明の機会」と公式に位置づけ
  • GPSNRの創設メンバー——2025年9月にGPSNRアシュアランスシステムへの正式コミットを発表し、独立した検証への移行を推進
  • SPOTT(ZSL/WWF)の天然ゴム評価でスコア80.3%(2025年3月)——透明性・トレーサビリティ・サプライヤーエンゲージメント等を評価する指標
  • CASCADE(Collaborative Action on Smallholder Community for Agricultural and Development Effectiveness)プロジェクト:Porscheと共同でインドネシアの小規模農家6,500人を対象に持続可能なゴム栽培・農林複合経営を支援——EUDRのGPS登録と生計改善を同時に実現するモデル

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •農場プロットGPS座標データへの引き上げ:管轄レベル(省以上)から農場プロット単位GPSへのトレーサビリティ粒度引き上げは、数百万人規模の小規模農家への現地GPS登録支援を意味する。2026年12月30日の義務化に向けた残り期間でのキャパシティ構築の加速が最優先課題。
  • •天然ゴム混合流通慣行との根本的な不適合:タイ・インドネシア・ベトナムの集荷・加工段階でのブレンド慣行は、プロット単位トレーサビリティとの整合が困難。中間業者(コレクター・プロセッサー)を含むサプライチェーン全体の再設計が必要であり、Michelin単独では解決不可能。

【GRI編集部コメント】

MichelinのEUDRカードは「工業製品メーカーが食品メーカーと同じ規制フレームワークの下で森林破壊証明を求められる」という、EUDRが産業セクターを超えた普遍的な規制として機能することを示す事例です。Ferrero・Marsが食品側の代表例なら、Michelinは工業製品側の代表例として対比的に参照すべきケースです。長期の取り組み(2015年のゼロ・デフォレステーションのコミットメント・GPSNRへの参加)が先行者としての立場を与えた一方、「管轄レベル100%トレーサブル」から「農場プロットGPS」へのラストマイルは依然として最難関の課題として残っています。GRIを読む日本の自動車・タイヤ・ゴム製品業界の企業にとっての実践的示唆は、Michelinが直面するEUDR対応の困難さがそのまま自社の天然ゴム調達リスクに直結するという点です。天然ゴムを原料とする自動車部品・工業製品をEU市場に輸出する日本企業は、EUDRのサプライチェーン上流に位置するゴム農家のGPSポリゴンデータを証明できなければ市場アクセスを失うリスクがあります。GPSNRへの参加とMichelinが構築しつつあるトレーサビリティエコシステムとの接続が、日本企業にとっての現実的なEUDR対応のルートとなります。

EUDRの国別リスク分類・GPSNRアシュアランスシステムの第三者検証スケジュール・農家GPS登録の進捗は変化します。最新情報はMichelin公式サイトおよび欧州委員会EUDRポータルをご確認ください。

IKEA

IKEA Group (Ingka Group)
スウェーデン/オランダ家具・小売
適応・整備中

⚡ 森林資源調達におけるNGO監視対応と供給網トレーサビリティの強化

IKEAは2025会計年度に約1,500万立方メートルの木材を加工しており、EUDRの7対象品目のうち「木材・木製品」で最も大きな影響を受ける代表的な製品メーカーだ。FSC(森林管理協議会)の創設メンバーであり、FY25には使用木材の96.5%がFSC認証取得済みまたはリサイクル材だった(同社サイトをMongabayが引用)。しかしMongabayの2026年3月の分析は、EUDRが既存の認証よりも厳格な地理座標データとデューデリジェンスを求めており、IKEAの木材のほぼ全てがFSC認証取得済みまたはリサイクル材であっても、過去の調査ではこの自主的な仕組みが違法または持続不可能な伐採を見逃しうることが示されている、と指摘した。EUDRは位置情報(IWAYのQ&Aでは小数点以下6桁の緯度経度)の収集と、輸入・販売前のDDS(デューデリジェンス声明)の提出を求めており、IKEAがIWAY監査とFSC認証を軸にしてきた体制とは異なる法的要件だ。Mongabayによれば、2026年1月のEIAの調査で、違法に生産された熱帯雨林材がEU複数加盟国に輸入されている証拠が見つかり、EIAのJacobsen氏は、EUDRが施行されていればこうした出荷はできなかったと強く主張できると述べた。IKEAはEUDR準備について「規制変更への追加的な時間と投資が必要になりうる」とコメントしている。Mongabayによれば、2025年10月に29の企業・団体がEUDRを「再開・延期・変更」しないようEUに求める書簡を送っており、IKEAは署名者に含まれない。大企業向け義務適用は2026年12月30日(Regulation (EU) 2025/2650による再延期後)。

🎯 主な取り組み・施策

  • FSCの創設メンバー。FY25の使用木材の96.5%がFSC認証取得済みまたはリサイクル材——「IWAY」調達基準のもとでサプライヤーに要件を課し、EUDRへの適合も求めている(IWAY Forest Materials Q&A、要件F9.2)
  • IWAYサプライヤー基準の更新:EUDRが要求する地理座標情報・DDS提出義務に対応するため、木材サプライヤー向けデータ提供要件を更新。農場プロットレベルのGPS情報提供をサプライヤーへ要求する体制への移行を推進

⚠️ 継続する課題・リスク

  • •農場プロットGPSデータ収集体制の根本的な構築:2025会計年度に約1,500万立方メートルの木材を加工したIKEAが、多数のサプライヤーから農場プロット単位のGPS座標データを収集・管理・検証する体制を2026年12月30日までに整備することは、大きな実務的ハードル。FSC認証を補完するGPS座標収集のために、IWAYサプライヤー要件の更新とデジタルシステムへの大規模投資が必要。
  • •複合製品のDDS連鎖管理:家具1製品に含まれる多数の木材部品それぞれについてDDSを連鎖的に管理するシステム構築が不可欠。手動管理では持続不可能な規模であり、デジタルトレーサビリティプラットフォームへの移行が急務。
  • •ルーマニア・ロシア隣接地域等の高リスク調達国でのトレーサビリティ強化:EIAが指摘した違法伐採木材の混入リスクは、国別リスク分類が最終確定した後も継続する構造的課題。特に国境地帯・保護林隣接地域の調達については個別の強化監査が必要。
  • •EUDRの延期・規制変更による計画不確実性:推進書簡に署名しなかったIKEAは「規制変更への適応コスト」を懸念事項として挙げており、2026年5月4日に公表された簡素化レビュー(COM(2026) 191)は基本法令のさらなる改正を提案しなかったが、ガイダンスの更新や対象製品の見直しが続いており、その追加対応コストが計画の不確実性要因となっている。

【GRI編集部コメント】

IKEAのEUDRカードは、GRIの分析では、EUDRシリーズの4社の中で最も「様子見」に近いポジションを示しており、Ferrero(推進派)・Mars(先行投資・推進派)・Michelin(GPSNR創設メンバー)との対比において重要な分析価値を持ちます。FSC創設メンバーであるIKEAが、EUDRの推進書簡に不参加だったという事実は、「自発的認証を重視してきた企業が、法的義務の強制適用には慎重な立場を取っている」という逆説を示しています。EIAは、ルーマニアの調査を踏まえて、FSC認証だけでは違法伐採を防げない場合があると指摘しています。GRIを読む日本の家具・木製品メーカー・木材輸入業者にとっての最重要示唆は、「FSC認証ではEUDR非対応」という基本原則の理解です。FSC認証を持つ木材を調達していても、農場プロットレベルの位置情報の収集とDDS提出の義務は別途必要です。日本企業が欧州向けに木材・木製品を輸出する場合、EUDR義務化(2026年12月30日)に向けた独自のGPS座標データ収集体制の構築を今すぐ開始する必要があります。

EUDRの義務化スケジュール・国別リスク分類・FSC Aligned for EUDRの仕様は変化します。最新情報は欧州委員会EUDRポータルおよびIKEA公式サイトをご確認ください。