Ferrero
Ferrero Group⚡ カカオ原料の追跡率向上と生産地マッピングによる調達管理推進
Ferreroは「Nutella」「Kinder」等のブランドを持つイタリア/ルクセンブルクの大手消費財メーカーで、EUDRの主要対象原料であるカカオ・パーム油・コーヒーへの依存度が高い。「Sacco conosciuto(知っている袋)」という哲学——各原料の産地・栽培方法・生産者を深く理解するという姿勢——をEUDRの法制化以前から事業に組み込んでいた。2025年11月10日の公式記事「Progress Can't Wait: EUDR Now」では、Airbus社の衛星監視システム「Starling」でEUDR関連のパーム油・カカオ・コーヒーのサプライチェーンの100%を監視していると説明した。EUDRの延期については推進派の立場を明確にし、2025年10月にはNestlé、Mars Wrigleyなどとともに、さらなる延期を避けるよう求める書簡に参加した。EUDRの適用日は、Regulation (EU) 2025/2650(2025年12月23日官報掲載)による再延期で、大企業・中規模事業者が2026年12月30日、小規模・零細事業者が2027年6月30日(EU木材規則の対象だった零細・小規模事業者は2026年12月30日)となった。
🎯 主な取り組み・施策
- Airbus Starling衛星監視システムをEUDR関連全サプライチェーン(パーム油・カカオ・コーヒー農園)に適用——公式記事によれば、EUDR関連のサプライチェーンの100%を監視している
- Sourcemapなどのプラットフォームでサプライチェーンを詳細に地図化・監視し、社会・農業慣行のデータを継続的な改善に活用(2025年11月の公式記事)。FoodNavigator(2023年11月)は、同社が最新のサステナビリティレポートでカカオの農場出荷時点までのトレーサビリティ96%超を報告したと伝えている
- Commodity Charters(原料別サステナブル憲章):主要原料ごとにサプライヤーが満たすべき要件を定め、進捗を年次で追跡
- パーム油は100%がRSPO認証(Segregated)(FoodNavigator、2023年11月の記事が引く同社サステナビリティレポート)。カカオ・コーヒーの認証経由の調達比率は、本カードの出典では確認できないため掲載しない
- 延期回避を求める書簡(2025年10月):Nestlé、Mars Wrigleyなどとともに、EUDRのさらなる延期を避けるよう欧州の議員と欧州委員会に求める書簡に参加(ESG Today)。Ferrero自身も2025年11月に公式記事「Progress Can't Wait: EUDR Now」で適時の実施への支持を表明
⚠️ 継続する課題・リスク
- •ラストマイルの追跡コスト:農場ポリゴンマップやGPS技術へのアクセスが限定的な小規模農家のラストマイル追跡は、大規模な現地フィールドエージェント投入・データ統合プロセスを必要とし、高いコストが継続的に発生する。
- •EUDR延期による先行投資コストの非対称性の長期化:二度目の延期(2026年12月30日義務化)により、Ferreroが先行して構築したトレーサビリティ体制のコストを競合未対応企業が回収しない期間がさらに延長された。この非対称性がEUDRの推進意欲・ROIに影響するリスクがある。
- •国別リスク分類の不確実性:2025年5月の実施規則(EU)2025/1093による分類に対し、2025年7月9日に欧州議会が、この規則が委任された実施権限を超えているなどとして、廃止と見直しを求める非立法の決議を採択した。コートジボワール・マレーシア・インドネシアは同規則の低リスク国の一覧になく(標準リスク)、ガーナは低リスク国である。今後の分類の見直しによって、Ferreroが必要とするDDS対応の具体的な負担量が変動しうる。
- •EUDR情報システムとの統合:DDSは欧州委員会の情報システムを通じて電子提出する必要があるが、多数のポリゴンデータを同システムの形式で準備・提出する技術的な統合負荷が継続的な実務課題となっている
【GRI編集部コメント】
FerreroのEUDRカードは「規制を先取りした企業が、規制の延期によってコスト競争上の不利を被るという皮肉」を示す事例です。FerreroはAirbus Starling衛星監視システムなどに投資してEUDRへの先行対応を進めてきましたが、EUDRが二度延期された結果、この投資コストを回収する期間がさらに伸びています。「Progress Can't Wait」という公式記事のタイトルが示す通り、Ferreroは延期に反対し、適時の実施を求める立場に立っています。GRIを読む日本企業にとっての最重要示唆は、EUDRが定める「2020年12月31日以降の森林破壊ゼロ」という遡及的なカットオフ日という設計です。2026年12月30日の義務化に向けて、今から過去の調達先の森林破壊状況を遡って証明する体制を構築しなければならないことを意味します。調達先のポリゴンマップデータが存在しない場合、EUDR対象の7品目(カカオ・パーム油等)を含む製品のEU市場アクセスが失われるリスクがあります。Ferreroのように「規制前から哲学として実践していた企業」こそが義務化時に市場競争力を維持できるという構造は、日本の食品・飲料メーカーにとっても重要な経営的示唆を持っています。
EUDRの国別リスク分類・義務化スケジュール・DDSシステムの仕様は変化します。最新情報は欧州委員会公式サイトおよびFerrero公式サステナビリティサイトをご確認ください。
