BASF
BASF SE⚡ 規制強化下でのコスト削減改革と製品ポートフォリオ戦略の適合
BASFはドイツの総合化学メーカーとして、EU REACHの主登録義務(2018年完了済み)を果たした後も、SVHCリスト拡大・認可手続き・制限(Annex XVII)という三層の継続的な規制対応を余儀なくされている。2026年2月4日の更新でSVHC候補リストは253物質となり(n-ヘキサンとBisphenol AFが追加)、追加物質を0.1wt%超含む成形品の生産者・輸入者は、REACH第7条第7項により収載から6か月後の2026年8月4日から、ECHAへの届出(第7条第2項)の対象となった。REACH規則の全面改正(Recast)は、欧州委員会が2026年4月27日に見送りを表明した(欧州議会 Legislative Train では「Blocked」、2026年9月20日更新時点)。PFAS包括制限案(REACH附属書XVIIの制限として審議中)については、BASFはすでに塗料・コーティング分野向けに非フッ素系代替添加剤(Efkaシリーズ等)を上市済みで、規制への先行対応を実践している。一方でBASFは、同社の説明(2026年2月27日)によれば、2025年末に年間約€1.7Bのコスト削減ランレートを達成し、2026年末には年間€2.3Bのコスト削減を見込む構造改革を同時に進めており、REACH対応コストと収益性向上の両立が経営の核心課題となっている。
🎯 主な取り組み・施策
- SVHC253物質(2026年2月時点)への対応:n-ヘキサン・Bisphenol AF(BPAF)を含む最新追加物質のSDS更新・SCIP通知への対応(ECHAへの届出は第7条第7項により2026年8月4日から)
- PFAS代替添加剤の先行上市:塗料・コーティング分野向けに非フッ素系代替添加剤(Efkaシリーズ:変性シリコーン・ポリアクリレート・スルホサクシネート等)を展開——REACH附属書XVIIのPFAS制限案への対応
- TripleSS(Sustainable Solution Steering)メソッドでPFAS含有製品を「貢献・適切・移行必要・再設計必要」の4段階に分類・管理し段階的に廃止
- 同社の説明(2026年2月)によれば、2025年末に年間コスト削減ランレート約€1.7Bを達成し、2026年末には年間€2.3Bのコスト削減を見込む
- World Steel Association・ISO標準化活動等への参画を通じ、化学物質の国際的な「見える化」基盤の整備を主導
⚠️ 継続する課題・リスク
- •SVHCリスト拡大ペースの加速と対応負荷:SVHC候補リストは通常年2回の更新で拡大する(2026年は2月の1回のみ、次回は2027年6月の見込み)。多品種・大量製品ポートフォリオを持つBASFは、各更新に対するSDS改訂・SCIP通知・顧客情報伝達・代替品開発という4層の対応コストが累積的に増大している。
- •REACH改正見送り後の動向:欧州委員会は2026年4月27日にREACH規則の全面改正(Recast)の見送りを表明した。登録・認可プロセスの大幅な変更による再登録コストの懸念は後退したが、SVHC候補リストへの追加や附属書XVIIの制限の追加には引き続き対応が必要となる。
- •代替品の性能・認証ギャップ:SVHC物質の代替品(特にEfkaシリーズ等の非フッ素系添加剤)が既存製品と完全同等の性能を持たない用途が存在し、顧客の製造ライン再認証に数年単位の時間と費用が必要。特に半導体・自動車・航空宇宙分野では認証期間が長く、代替品への切り替えが困難なケースがある。
- •化学物質持続可能性戦略(CSS)・SAfEとの連動:EU化学物質持続可能性戦略(Chemicals Strategy for Sustainability)に基づく施策・SAfE(Sustainable and Safe for Europeans)フレームワークとの整合が、中長期的な製品開発戦略の方向性を左右する。複数の規制改正が同時進行する中での対応優先順位の設定が難しい。
【GRI編集部コメント】
BASFのREACH対応は「総合化学メーカーが規制を競争優位の源泉に変える試み」として評価できます。TripleSS(Sustainable Solution Steering)という独自メソッドでREACH規制対応を製品ポートフォリオ転換の戦略ツールとして体系化していること、Efkaシリーズという非フッ素系代替添加剤を先行上市していることは、規制を「コスト」ではなく「製品革新のドライバー」として位置づけていることを示しています。しかし規模の大きさがゆえのREACH対応負荷も明確です。SVHCリストが253物質(2026年2月)に達する中、多品種大量製品ポートフォリオ全体への対応コストは増大の一途をたどっています。GRIを読む日本の化学・素材メーカーにとっての示唆は、BASFが採用するTripleSメソッドの構造——製品を「問題あり」「移行必要」等に分類し系統的に代替を進める——が、日本企業の自社製品のREACH対応管理に直接適用できる参考モデルだという点です。EU市場への製品供給を行うすべてのサプライチェーン参加者が、自社製品のSVHC含有状況を把握しSCIPデータベースへの登録体制を整備することが急務となっています。
SVHC候補リストは通常年2回更新されます(2026年は2月の1回のみ、次回は2027年6月の見込み)。最新情報はECHA公式サイトおよびBASF公式REACHポータルをご確認ください。
