EU 自然再生法
規制発動・施行時期 / ENFORCEMENT TIMELINE
2024年8月18日
規制の概要
EU自然再生法(Nature Restoration Law:Regulation (EU) 2024/1991)は、EU域内における劣化が進んだ陸域、海域、沿岸、淡水、および都市などの全生態系を長期的かつ持続可能な方法で回復させ、生物多様性の損失を食い止めるとともに、EUの気候変動適応・緩和目標の達成を強力に支援するために制定された画期的な規則である。欧州グリーンディールおよび「2030年生物多様性戦略」の主要柱として、2024年6月17日にEU理事会によって最終承認され、同年7月29日に官報公布、8月18日に発効した。EU規模での自然回復について法的拘束力を持つ初めての包括的法律である。本規則は、加盟国に対して2030年までにEU全体の陸域および海域の少なくとも20%において自然再生措置を実施し、2050年までに回復が必要なすべての生態系に措置を拡大することを義務付けている。具体的には、森林、草原、湿地、河川などの劣化した特定の生息地について、2030年までに30%、2040年までに60%、2050年までに90%の割合で状態を改善させる。また、都市部における緑地および樹冠率の維持・拡大、ミツバチや蝶などの花粉媒介者の個体数減少の逆転、2030年までに少なくとも2万5,000キロメートルの河川を障壁のない自由流動的な状態に戻すことなどの個別目標が定められている。各加盟国は発効から2年以内に、具体的な施策を盛り込んだ「国別自然再生計画」を策定・提出することが義務付けられている。
施行スケジュール・年表
2022年6月22日:欧州委員会が規則案を提案。
2024年2月27日:欧州議会が規則案を採択。
2024年6月17日:EU環境相理事会にて加盟国の支持を得て最終承認。
2024年7月29日:EU官報に公布(Regulation (EU) 2024/1991)。
2024年8月18日:規則発効。
2026年9月頃まで:EU加盟国が「国別自然再生計画(National Restoration Plans)」を欧州委員会へ提出する期限(発効から2年以内)。
2030年:陸・海域の少なくとも20%での再生措置実施期限。
2033年:欧州委員会による規則の適用状況、農林漁業・社会経済への影響評価・検証の実施。
2050年:回復が必要なすべての生態系への措置完了目標年。
企業への影響・実務対応
本法は主にEU加盟国政府に義務を課すものであるが、各加盟国が「国別自然再生計画」を具体化していく過程で、現地で操業する企業に重大な影響を及ぼします。特に、農業、林業、インフラ建設、不動産・都市開発、および鉱物採掘セクターは、土地利用の制限や生物多様性への配慮が厳格化されるため、事前の影響評価や追加コストが生じる可能性があります。一方、洋上風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギー開発については、「極めて重要な公共の利益」として例外措置が設けられ、許認可プロセスが滞らない配慮がなされています。また、CSRDに基づく自然・生物多様性関連情報の開示(ESRS E4)が求められる中、EUで活動する企業にとっても、自社バリューチェーンが生態系に与える影響の可視化と保全への寄与が、企業価値・評価の向上において必須要件となります。
公式一次情報・関連リンク
- 欧州委員会 - 自然再生法(Nature Restoration Law)公式サイト
- EU官報 (EUR-Lex) - 自然再生法 (EU) 2024/1991 規則テキスト (英語)
- 環境省 - 生物多様性及び自然資本に関する国際動向(EU動向)
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