EU ETS 排出上限キャップ設定およびリニア削減率(LRF)強化規則
規制発動・施行時期 / ENFORCEMENT TIMELINE
2005年創設(2023年「Fit for 55」改正によりキャップ削減加速)
規制の概要
本カードは、EU域内排出量取引制度(EU ETS: Directive 2003/87/EC)における総排出量上限「キャップ(Cap)」の算定方法および年次削減ペースを規定する「リニア削減率(LRF: Linear Reduction Factor)」の法的決定メカニズムに特化した解説エントリーです。
EU ETSは、域内の大規模産業施設、発電所、航空、および海運セクターから排出されるGHG総量に上限(キャップ)を設け、市場ベースで排出枠(EUA)を取引するキャップ・アンド・トレード制度です。EUの「Fit for 55」気候立法パッケージに伴う指令改正により、2030年までにETS対象セクターの排出量を2005年比で62%削減するため、キャップを毎年削減させるLRFが従来の年2.2%から年4.3%(2024年〜2027年)および年4.4%(2028年〜2030年)へと劇的に引き上げられました。さらに、2024年と2026年には域内全体のキャップを直接削減するワンオフ(One-off)キャップ調整が実施されます。
施行スケジュール・年表
企業への影響・実務対応
欧州域内でプラントや製造工場を運営する事業者、ならびに航空・海運会社は、毎年供給される排出枠の総量が物理的に急減する「気候市場の構造的供給不足」に直接直面することになります。キャップの急速な引き締めとLRFの強化により、炭素市場におけるEUA価格が高値水準で推移することが定着し、炭素排出コストが企業の製造コスト・営業利益にダイレクトに跳ね返る構造が強まります。
事業者は、省エネ投資、電化(Electrification)、水素・バイオマス転換、およびCCUS(炭素捕獲・利用・貯留)などの抜本的な脱炭素設備投資を加速させない限り、市場からの高額なEUA購入を余儀なくされます。ETSキャップの年次減少スケジュールを自社の事業計画・設備更新ロードマップに直接組み込む高度な気候リスクマネジメントが不可欠です。
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