EU 域内排出量取引制度 (EU ETS)
規制発動・施行時期 / ENFORCEMENT TIMELINE
2005年1月施行(海運拡大・無料割当廃止等のフェーズ4適用中)
規制の概要
EUの域内排出量取引制度(EU ETS:Emissions Trading System)は、欧州の気候変動対策における中核的な柱であり、温室効果ガス(GHG)排出量を最も費用対効果の高い方法で削減するための世界最大のキャップ・アンド・トレード型炭素市場です。
「Fit for 55」パッケージおよび欧州グリーンディールに基づき、2030年までにETS対象セクターからの排出量を2005年比で62%削減することを目指しています。
EU ETSは、発電所、鉄鋼やセメントなどの大規模なエネルギー集約型産業、欧州域内の航空セクター、そして2024年から対象となった海運セクターに適用されます。管轄される施設全体の排出量上限(キャップ)が毎年徐々に引き下げられ、企業は排出許容量である「排出枠(Allowances)」をオークションや無償割当で取得し、過不足分を市場で自由に取引(トレード)します。
特に、国境炭素調整措置(CBAM)と表裏一体の法体系として設計されており、国際サプライチェーン全体の脱炭素化を推進する最も強力な経済的規制です。
施行スケジュール・年表
関連詳細トピック
企業への影響・実務対応
EU域内に生産拠点を持つ企業だけでなく、原材料や部品を欧州へ輸出、あるいは欧州から物流手配を行うすべての企業に影響が生じています。EU ETS内の鉄鋼やアルミ等に対する無料割当が2026年から段階的に廃止されることに伴い、EU域外からこれらの品目を輸出する企業に対するCBAM証明書の購入義務(炭素国境税)が連動して値上がりするため、実質的な対欧関税上昇リスクとしてサプライチェーンの調達コスト設計に織り込む必要があります。
欧州に工場や生産拠点を持つ企業は、無償割当枠の縮小と炭素価格(ETS市場価格)の高騰により、直接的な操業コストの上昇圧力に直面します。非化石エネルギーへの切り替え、電化、および高効率設備の導入といった脱炭素投資の回収期間が大幅に短縮されるため、積極的なクリーン投資判断が求められます。
2024年より始まった海運分野へのETS適用(2024年は排出量の40%、2025年は70%、2026年には100%をカバー)により、コンテナ船などの海上運賃に炭素サーチャージ(ETS surcharge)が追加され、国際海上輸送コストが上昇しています。またイギリスは独自のUK ETS(英国排出量取引制度)を運用しており、2027年1月1日に導入される英国版CBAMの税率の算定基準にもなるため、英国および欧州本土の両方に拠点・輸出網を持つ企業は、2つの炭素市場の価格動向と排出量計算ルールを同時に管理する必要があります。
