米国 紛争鉱物開示規則:2017年以降の限定的執行の実務
規制の概要
ドッド・フランク法第1502条に基づく紛争鉱物開示規則(2012年制定、SEC規則13p-1)は、SEC登録企業に対し、製品の機能・製造に必要な3TG鉱物(スズ・タンタル・タングステン・金)がコンゴ民主共和国(DRC)またはその周辺国を原産地とするかどうかの「合理的原産国調査(RCOI)」実施と、毎年5月31日までのForm SD提出を義務付けている。
この規則は制定当初、DRC産の紛争鉱物を含む製品について「DRCコンフリクトフリーと認定されなかった」旨のラベル表示を義務付けていたが、D.C.巡回区控訴裁判所がこの表示義務を憲法修正第1条(言論の自由)違反として無効とする判断を下し、ラベル表示義務は撤廃された。一方、RCOI実施とForm SD提出という報告・デューデリジェンス義務自体は現在も有効であり、毎年多数の企業がForm SDを提出し続けている。
トランプ第一次政権期の2017年には、規則の一部要素(特にデューデリジェンス報告書の実質的な内容確認)についてSECが実質的な執行を停止したとされ、この状態は現在も継続している。SEC自体が規則を撤廃したわけではなく、報告義務の法的な存在自体に変更はないため、GRIのLevel2判断(「変更なし」)自体は妥当である。実務上の要点は、法規則としては存続しているものの、監督官庁の執行姿勢が2017年以降弱いままという「制度は生きているが執行は緩い」状態が10年近く続いている点にある。
なお、GAOの複数の報告書は、サプライチェーンの透明性確保に依然として課題が残ることを指摘しており、EUの紛争鉱物規則など、他法域の類似制度がより厳格な期待水準を課しつつある点も、企業実務上の留意点として付言できる。
施行スケジュール・年表
2012年8月:SECがドッド・フランク法第1502条に基づく紛争鉱物開示最終規則を採択
2017年4月:D.C.巡回区控訴裁の違憲判決を受け、SECがラベル表示義務撤廃およびデューデリジェンス報告の実質執行停止を発表
2025年5月31日:SEC登録企業による年次Form SD提出義務(RCOI調査等)が継続実施される
2026年8月現在:規則自体は有効であり毎年多数のForm SDが提出されているが、SECの厳格執行停止状態が10年近く継続
企業への影響・実務対応
米国上場企業およびそのサプライチェーンを構成する製造業者は、Form SDの提出義務および3TG鉱物のサプライチェーン調査(RCOI)対応を継続する必要がある。制度の連邦執行は限定的であるものの、EU紛争鉱物規則等のグローバル水準対応のため企業実務としてのデューデリジェンスは維持されている。
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