米国 GHGRP(温室効果ガス報告プログラム)ロールバック提案の内容と現状
規制の概要
EPAは温室効果ガス報告プログラム(GHGRP、40 CFR Part 98に規定)の大幅なロールバックを提案している。この提案が最終化されれば、対象となる報告カテゴリーの大部分が報告義務から除外され、石油・天然ガス部門(Subpart W)については2034年報告年度まで報告義務そのものが停止される。
ロールバックの法的根拠として、EPAは2点を挙げている。第一に、連邦最高裁のLoper Bright Enterprises v. Raimondo判決(2024年)によりChevron法理(行政庁の法解釈への裁判所の敬譲)が廃止されたこと。第二に、2025年8月にEPAが提案した2009年Endangerment Finding(GHGが公衆衛生・福祉を脅かすとの認定)の撤回提案により、GHG報告義務を命じる法的権限自体の根拠が失われつつあるとの立場を示していること。
現状(2026年8月時点)では、Part 98の現行要件は依然として有効であり、ロールバック提案自体はまだ最終規則化されていない。EPAは2025年度分の報告期限を2026年3月31日から2026年10月30日へ延長する規則は既に確定させたが、プログラム終了そのものの規則化はしていない。連邦レベルの報告義務の帰趨が不透明な中、複数の州(コロラド州等)が独自のGHG報告制度を維持・拡大する動きも見られる。
なお、業界側の反応は一様ではなく、化石燃料業界の一部からはむしろGHGRPの存続を求める声も上がっている(信頼性のあるデータとして自社の低炭素性を示す根拠に使われているため)。
施行スケジュール・年表
2009年10月:EPAが40 CFR Part 98(GHGRP mandatory reporting)を創設
2024年6月:連邦最高裁がLoper Bright判決を下しChevron敬譲を廃棄
2025年8月:EPAが2009年GHG Endangerment Findingの撤回を提案
2025年9月:EPAがGHGRP大半部門の報告義務撤廃およびSubpart Wの2034年までの延期規則案を公表
2026年3月:2025年度分報告期限の10月30日への延期規則が確定
2026年8月現在:GHGRPロールバック案は未最終化、現行規則は法的に有効のまま報告期限のみ延期中
企業への影響・実務対応
米国内に大容量排出施設(製油所、化学プラント、発電所、大規模製造工場等)を所有する企業は、2025年度排出量報告の期限が2026年10月30日へ延期されたことで当面の作業猶予を得ている。しかし、連邦ルール撤廃案の確定前であるため、データ算定・維持自体を中断することはリスクが伴う。また、コロラド州やカリフォルニア州など独自報告義務を課す州の拠点では州法対応を継続する必要がある。
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