米国 IRAクリーンビークル税額控除におけるFEOC規制の全体像とMACR基準
規制の概要
インフレ抑制法(IRA)Section 30Dクリーンビークル税額控除は、購入者が最大7,500ドルの税額控除を受けるための要件として、外国懸念事業体(Foreign Entity of Concern: FEOC ― 中国・ロシア・イラン・北朝鮮の政府・企業が25%以上の資本・議決権・取締役席を所有・制御する法人)が製造・加工したバッテリー部品(2024年〜)および重要鉱物(2025年〜)を排除することを求めていた。2025年7月4日成立の「One Big Beautiful Bill Act(OBBBA)」により、Section 30D自体は2025年12月31日をもって終了することが決定したが、同法はFEOC規制の考え方をクリーン電力製造税額控除(Section 45Y/48E)など他の税額控除へも波及・拡大させた。
過渡的な配慮として、重要支援コスト比率(Material Assistance Cost Ratio、MACR)という新たな判定基準が導入された。MACRは、FEOC由来の物品の調達コストを総物品コストから差し引いた額を、総物品コストで割って算出する。プロジェクトは技術・着工年ごとに定められた閾値を満たさなければ、税額控除の対象から除外される。財務省は、このMACR算定のためのセーフハーバー表を2026年12月31日までに公表する義務を負っている。それまでの間、納税者はサプライヤー証明書と既存のIRS通達(Notice 2025-08)に依拠して判断することになる。MACR基準を満たさず控除額を過大に申告した納税者には、20%の正確性関連ペナルティを含む罰則が科される。
2025年6月16日より前に締結された拘束力のある書面契約であり、かつ2025年8月1日より前に施設の建設に着手している場合は、一定の除外が認められる経過措置も設けられている。中国サプライチェーンへの依存排除という基本方針は一段と強化されており、FEOC規制の対象拡大により、意図せず「外国」または「禁止対象事業体」に分類されてしまう国内企業が生じる懸念が業界内で指摘されている。
施行スケジュール・年表
2022年8月16日:IRA成立、Section 30DにFEOC排除条項が盛り込まれる
2023年12月1日:財務省・DOEがFEOCの定義に関する詳細ガイドラインを公表(25%ルール等)
2024年1月1日:バッテリー部品に関するFEOC規制が適用開始
2025年1月1日:重要鉱物に関するFEOC規制が適用開始
2025年6月16日:この日より前に締結された拘束力のある書面契約は一定の経過措置の対象
2025年7月4日:OBBBA成立。Section 30Dの2025年末終了が決定するとともに、FEOC規制の他税額控除への波及が確定
2025年8月1日:この日より前に施設建設に着手している場合も経過措置の対象
2025年12月31日:Section 30Dクリーンビークル税額控除の適用終了
2026年12月31日:財務省によるMACR算定セーフハーバー表の公表期限
企業への影響・実務対応
EV・バッテリーメーカーおよび素材・鉱物サプライヤーは、2025年末のSection 30D終了までの過渡期において引き続き厳格なFEOC排除スクリーニングを行う必要があると同時に、クリーン電力分野など他税額控除へのFEOC規制拡大に対応したサプライチェーンの再編が求められる。特に中国企業との合弁事業やライセンス提供契約を維持している企業は、持株比率・制御要件の再点検および代替調達先の確保が不可欠となる。財務省による早期のMACRセーフハーバー表・ガイダンス発出の動向を継続的に注視する必要がある。
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