米国 SEC気候関連開示規則:訴訟の経緯と2026年廃止提案の内容
規制の概要
SECの気候関連開示規則(Climate Rules)は2024年3月に確定したが、成立直後から複数の訴訟が提起され、第8巡回区控訴裁判所に一本化された。SECは2024年4月4日に規則の適用を自ら停止(stay)し、これまで一度も実際の開示義務が発効したことはない。
2025年3月27日、SECは規則の弁護(防御)を取りやめる決定を下した。これを受け第8巡回区控訴裁判所は2025年9月12日、SECが規則を「取り消す(rescind)、撤廃する(repeal)、修正する(modify)、あるいは弁護を再開する(renew defense)」かを決するまで、係属中の複数の申立てを保留(abeyance)とする命令を出した。裁判所は、規則の運命を決めるのはSEC自身の責任であるとした。
2026年5月4日、SECは規則廃止提案「Rescission of Climate-Related Disclosure Rules」(RIN 3235-AN76)をホワイトハウスの情報・規制問題局(OIRA)に正式に提出し、廃止に向けた最初の正式な手続きに着手した。2026年5月8日には、規則に異議を唱えていたアイオワ州等の申立人側が、逆に裁判所に規則の即時無効化を求める申立てを行っている(2026年2月の第5巡回区判決Airlines for America v. Department of Transportationを根拠に、SEC自身が規則の違法性を認めた以上、裁判所は規則を無効化すべきだと主張)。
2026年5月29日、SECは正式に規則の全面廃止を提案し、2026年6月3日にFederal Registerに掲載された。廃止提案は行政手続法(APA)上のノーティス・アンド・コメント手続きを要するため、パブリックコメント期間(締切2026年8月3日)を経てSECが改めて採決する必要がある。廃止された場合の年間コスト削減効果は、10年間で年平均49億ドルと試算されている。SECは廃止理由として、規則がSECの制定権限の範囲を超えていたこと(法定権限の逸脱)を主たる根拠として挙げている。
2026年8月末時点で、規則は依然として「stay(適用停止)」の状態にあり、廃止手続きの最終化は2026年後半から2027年初頭になる見込みとされている。なお、SECの2010年気候関連ガイダンス(重要な気候リスクの開示を求める、15年以上運用されている既存のガイダンス)自体は今回の廃止提案の対象外であり、引き続き有効である。
施行スケジュール・年表
2024年3月6日:SECが気候関連開示最終規則を採択
2024年4月4日:複数の司法意議を受け、SECが自ら規則の適用停止(stay)を決定
2025年3月27日:SECが規則の法廷防御を取りやめる決定を発表
2025年9月12日:第8巡回区控訴裁がSECによる規則処理決定まで訴訟手続きを一時停止(abeyance)
2026年5月29日:SECが気候開示規則の全面廃止(Rescission)を正式提案(Federal Register公示6月3日)
2026年8月3日:廃止提案に対するパブリックコメント受付終了(最終確定待ち)
企業への影響・実務対応
米国市場に上場する日本企業・グローバル企業は、連邦レベル(SEC規則)に基づく義務的GHG排出量・気候リスク開示の負担が消滅する見通しである。ただし、カリフォルニア州SB 253・SB 261やEU CSRDなど他の法域における開示義務、およびSECの2010年既存気候ガイダンス(マテリアルな気候リスク開示)は依然として有効であるため、個別法域に応じた開示体制の維持が必要である。
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