EU 化学物質・製品安全分野
規制発動・施行時期 / ENFORCEMENT TIMELINE
EU階層・直接適用/指令体系
規制の概要
EUの化学物質・製品安全分野は、化学品の製造・上市に先立つ登録・評価・認可・制限を求める「REACH規則」を中核に、電気電子機器における特定有害物質の使用を制限する「RoHS指令」、冷媒等に使用されるフッ素化温室効果ガスの上市・使用を段階的に削減する「Fガス規則」、および医療機器に含まれる化学物質の安全性を規律する「医療機器規則(MDR)」の化学物質要件までを含む、製品に含まれる化学物質を包括的に管理する分野です。
REACH規則は2006年に成立し、2007年の施行開始以降、既存化学物質を含む数万物質の段階的な登録・評価を進めてきました。RoHS指令は2003年に制定され、2011年の改正(RoHS2)でCEマーキングの対象拡大が行われています。Fガス規則は2006年制定の初代規則を経て、2024年に大幅改正(Regulation (EU) 2024/573)が成立し、2025年以降、高GWP(地球温暖化係数)冷媒を含む機器の上市禁止が段階的に拡大されています。医療機器規則(MDR)は2017年に成立し、2021年から本格適用されているEU医療機器の包括的規制で、化学物質含有についてもREACH・RoHSと連動した要件が課されています。これらEUの化学物質・製品安全規制を一体的に理解するための上位レベル(Level1)のRegulatory Systemとして位置付けられています。
施行スケジュール・年表
2003年:RoHS指令制定
2006年:初代Fガス規則制定
2006年12月:REACH規則成立
2007年6月:REACH規則施行開始
2011年:RoHS2(改正RoHS指令)成立
2017年:医療機器規則(MDR)成立
2021年5月:MDR本格適用開始
2024年:Fガス規則改正(Regulation (EU) 2024/573)成立
2025年:改正Fガス規則に基づく高GWP冷媒機器の上市禁止開始
2026年:Fガス規則の追加禁止措置適用開始(家庭用冷蔵庫等のフッ素系ガス使用ほぼ全面禁止)
関連詳細トピック
EU REACH規則(化学物質の登録・評価・認可・制限)
REACH規則(Regulation (EC) No 1907/2006)は、EU域内で製造・輸入されるすべての化学物質(年間1トン以上)を対象に、人の健康と環境の保護、およびEUの化学産業の競争力維持を目的とした包括的規制です。企業に対して化学有害性情報の特定・登録を義務付け、CLP規則やESPR、EU電池規則、Fガス規則など、GRIにおける化学物質関連規制を横断して支配する化学物質統制の中核として機能します。 REACH規則の運用は、登録(年間1トン以上の化学物質を製造・輸入する事業者が、その安全情報をECHAに登録する義務)、評価(ECHAおよび加盟国当局が登録内容の品質・整合性および安全性評価データを精査するプロセス)、認可(高懸念物質のうち特にリスクが高いと判定された物質について、欧州委員会の個別認可がない限り使用・上市を禁止する制度)、制限(特定の危険有害性を持つ物質について、特定用途またはすべての使用・上市を制限・禁止する措置)、そして高懸念物質(SVHC)候補リストへの収載によるサプライチェーン内の情報伝達義務、という5つの柱で構成されています。
EU RoHS指令(有害物質制限・対象物質・除外用途)
EU RoHS(Restriction of Hazardous Substances)は、電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限するEU指令。 対象物質や適用除外は定期的に見直されるため、企業には継続的な製品コンプライアンス管理が求められます。
EU Fガス規則(フッ素化温室効果ガス規則)
本規則(Regulation (EU) 2024/573)は、気候変動対策(欧州グリーンディール)の一環として、強力な温室効果ガスであるフッ素化温室効果ガス(Fガス:HFCs、PFCs、SF6等)の排出を抑制・削減することを目的とする包括的な大気・冷媒制御規制です。冷媒、空調設備、電力設備における製造・市場投入・使用・回収のライフサイクル全般を統制する、大気環境保全のための基盤規制として機能し、REACH規則(PFASや冷媒代替化学物質の毒性管理)、ESPR(空調機器等の低GWP冷媒対応要件)、産業排出指令(IED、製造施設の大気汚染排出抑制)とも連携しています。 制度は主に3つの要件で構成されています。HFC(ハイドロフルオロカーボン)の上市可能量を段階的に削減し2050年までに消費量ゼロを目指すフェーズダウン制度、冷凍空調機器・ヒートポンプ・発泡剤・エアゾール・電力設備(SF6等)といった用途別に地球温暖化係数(GWP)閾値に基づく使用禁止・代替フロン制限を課す用途別規制、そしてFガス含有設備の定期漏洩点検・自動検知器設置義務・回収義務・技術者認証制度からなる漏洩防止・技術者認証制度です。
EU 医療機器規則(MDR)化学物質含有制限要件
EU医療機器規則(MDR:Medical Device Regulation (EU) 2017/745)は、EU内で流通する医療機器の安全性と性能を確保するための法的直適規則であり、2021年5月26日に完全適用されました。本規則は品質安全基準にとどまらず、医療機器の構成部材に含まれる化学物質の厳格な含有制限要件(付属書I第10.4項)を含んでおり、医療機器分野のメーカーにとってRoHS指令を超える有害物質管理基準となっています。 患者の体内に入る、液体の輸送・導入経路を構成する、または人体と直接接触する部材・パーツについては、発がん性・変異原性・生殖毒性物質(CMR、EU CLP規則のカテゴリー1Aまたは1Bに分類される物質)、および内分泌攪乱物質(ED、一部のフタル酸エステル系可塑剤等)の含有率が0.1 wt%(1,000 ppm)以下であることが義務付けられています。
EU 産業排出指令(IED 2.0)フレームワーク (EU Industrial Emissions Directive Framework - IED 2.0)
「産業排出指令(IED: Industrial Emissions Directive 2010/75/EU)」は、EU域内の大規模な産業施設(製造業、化学プラント、エネルギー部門など)に対し、大気、水、土壌への汚染物質排出を最小化することを義務付ける統合的環境管理規制です。2024年に成立した改正指令(IED 2.0)は、EUグリーンディールに基づき、より厳格な環境基準と対象範囲の拡大を規定しています。 新規則では、金属鉱山、電池の製造プラント(ギガファクトリー)、埋立地が新たに対象に含まれ、大規模な集約型の養豚・養鶏場も対象に加わりました(欧州委員会は、養豚・養鶏場全体の約30%としています)。また、従来の「最良利用可能技術(BAT: Best Available Techniques)」に基づく排出基準(BAT-AELs)の適用がより厳格化されます。
EU 水枠組み指令(WFD):優先物質リスト改定とPFAS・化学物質排水規制強化
EU水枠組み指令(Water Framework Directive: WFD)ならびに地下水指令・環境品質基準指令の改定に基づき、欧州の地表水・地下水における優先有害物質リストが大幅に更新されます。PFAS(24物質の合算評価)、ビスフェノールA、特定の医薬品や農薬などが新たに監視・規制対象となり、EU域内の工場排水および環境水中における環境品質基準(EQS)が厳格化されます。
EU 都市汚水処理指令(UWWTD)制度
欧州連合(EU)における汚水処理と水環境保護を目的とした基本指令が、約30年ぶりに全面改定された規制。微量有害化学物質や有機フッ素化合物(PFAS)、マイクロプラスチック等の微細汚染物質を除去する「第4次処理(Quaternary Treatment)」の義務化が盛り込まれた。最大の特徴は、汚水中の微細汚染物質の主要な発生源とされる「医薬品」および「化粧品」の製造事業者に対し、第4次処理にかかる費用の少なくとも80%を負担させる「拡大生産者責任(EPR)」制度を世界で初めて導入した点である。
EU 食品接触プラスチック規則 (EU) No 10/2011:カーボンブラック (Carbon Black)の厳格な純度基準と添加制限
EU食品接触プラスチック規則(Regulation (EU) No 10/2011)のポジティブリストにおいて、Ref. No. 42080としてカーボンブラックの使用が認可されています。ただし、不純物として混入する多環芳香族炭化水素(PAH)や重金属による健康リスクを防ぐため、トルエン抽出物やベンゾ(a)ピレン含有量に対する非常に厳格な純度要件が設定されており、かつ最終プラスチック製品への最大使用制限は2.5 wt%までと定められています。
EU CLP規則(化学物質の分類・表示・包装)
EU CLP規則(物質及び混合物の分類、表示及び包装に関する規則)
EU 残留性有機汚染物質 (POPs) 規則
EU POPs規則(残留性有機汚染物質に関する規則 (EU) 2019/1021)
企業への影響・実務対応
EU市場向けに化学品・部材を製造・輸入・販売する企業は、REACH規則に基づく物質登録・SDS整備に加え、RoHS指令に基づく鉛・水銀・カドミウム等特定有害物質の含有制限への対応が必須となります。未登録物質や規制値超過部材はEU市場への上市自体ができません。
冷凍・空調機器メーカーおよび冷媒取扱事業者は、Fガス規則に基づき、高GWP冷媒を含む機器の上市・保守用途での使用制限に対応した代替冷媒への切り替えが求められます。また、医療機器メーカーは、MDRとREACH・RoHSが連動する化学物質含有要件への適合と、サプライチェーン全体での含有情報管理体制の構築が実務上の課題となっています。
